天井の地震対策を見直す建築物防災週間定期調査報告における天井裏の安全確認の重要性

2021年8月30日~9月5日は令和3年秋季建築物防災週間です。

『建築物防災週間』とは
建築物防災週間は、火災、地震、がけ崩れ等による建築物の被害や人的被害を防止し、安心して生活できる空間を確保するために、広く一般の方々を対象として、建築物に関連する防災知識の普及や、防災関係法令・制度の周知徹底を図り、建築物の防災対策の推進に寄与することを目的として、昭和35年以来毎年2回実施しています。

(一般財団法人日本建築防災協会ホームページより)

建築物防災週間では、建築物等に対する定期報告の徹底と適切な維持保全等が重点取り組み事項とされており、天井も定期調査報告の調査項目に含まれています。

2011年の東日本大震災では天井落下による被害が大きく注目され、その後2014年4月には耐震天井の改正建築基準法が施行されるなど、天井の耐震化をとりまく環境は大きく変わりました。
しかしながら、その後も天井落下は繰り返し発生しています(※1)

※1(株)桐井製作所「なゐふるまち」災害カレンダーより(https://naifurumachi.kirii.co.jp/calendar

多くの人が利用する特殊建築物において、2015年に改正・施行された建築基準法第12条「定期報告制度」では建物所有者・管理者に特定天井の天井裏の劣化及び損傷の定期点検が義務付けられています。
しかし、法令通りに天井裏の各天井材の錆、緩みや外れを正しく点検されていないケースがとても多く、天井下地等が破損したまま施設が使用されています。

JACCAは建築物防災週間協力者として、天井裏を常時安全な状況に保つことの重要性をお伝えし続けることで、皆さまが所有・管理される建物の安全・安心を見直すきっかけになれれば幸いと考えています。

建築物防災週間を運営する立場から考える、天井裏の安全確認の重要性
一般財団法人日本建築防災協会 専務理事石﨑和志様
(建築物防災推進協議会幹事長)

建築物防災週間は建築物防災推進協議会で運営されています。
今回は協議会の会員(中央団体)である一般財団法人日本建築防災協会 専務理事 石﨑和志様に、天井裏の安全確認の重要性についてお話を伺いました。

定期調査報告の重要性をどのようにお考えでしょうか?

建物の安全性は、様々な技術や材料の組み合わせで成り立っており、その把握のためには専門技術者の関与が必要です。
建設時には、建築士の設計・監理とともに建築確認・検査が行われますが、その後の小規模な改修時には専門技術者は必ずしも関与せず、また、時間とともに生じる劣化や損傷を把握することは一般には難しいことが実情です。
建築基準法に基づく、特定建築物の定期調査報告は、建設後の建物の安全性を確保するため、建物所有者が、建築士や特定建築物調査員に依頼し調査を行い、その結果を特定行政庁に報告するものであり、建物の維持管理時に専門技術者が関与する貴重な機会です。

定期調査報告につきまして、特に重要と考える項目はございますか?

この定期調査の重要な調査項目として、「建築物の天井」があります。
天井については、これまでも劣化等により部材の落下による被害が繰り返されてきました。また、東日本大震災による天井落下の多発を受け、200㎡超の特定天井について設置基準の厳格化が図られ、定期調査の内容も、天井裏も含めた天井材の劣化及び損傷を確認するものと強化されました。
天井は雨漏りや結露により劣化が生じやすく、また地震時には隠れた部分で多くの損傷が生じます。
定期調査により、これらの劣化、損傷を確実に調査し、必要な対策を講じることが必要です。
また、定期調査では、この強化された基準に適合しないものについては、違法ではないものの現行の基準に基づく安全性が確保されていないものとして報告されます。これを踏まえ改修の検討を行うことも重要です。

定期調査報告の推進状況を差支えない範囲で教えていただけますでしょうか?

調査を実施し、報告を行っている建物所有者は現在7割程度にとどまっています。
建築物防災週間は、災害による建築物の被害や人的被害の防止を目的に、国土交通省と地方公共団体、建築関係の団体により構成された建築物防災推進協議会が協力して毎年2回実施され、「建築物等に対する定期報告の徹底と適切な維持保全等」も重点的なテーマとなっています。
定期調査報告は、専門家による建物の健康診断です。
建築物防災週間の機会に、自らの建物の安全性を振り返っていただき、体の健康診断同様、所有・管理される建物についても確実に専門技術者の調査を受け、その結果を受け、積極的な安全対策を講じていただくことをお願いします。

JACCA天井耐震診断士の立場から考える、天井裏の安全確認の重要性
株式会社東陽工業 代表取締役社長 藤本眞様
人物写真「代表取締役社長 藤本眞様」

JACCAでは天井耐震診断士という資格を認定し、天井裏の耐震性を調査する天井耐震診断をおこなっています。天井耐震診断の調査報告結果から、天井下地材等が破損した状態で施設が使用され続けているケースが多数見受けられます。
ここでは、天井裏の安全確認の重要性を考えるため、天井耐震診断の現場でみた天井裏の実態について、株式会社東陽工業 代表取締役 藤本眞様にお話を伺いました。

天井耐震診断では天井材の劣化・損傷等が殆どの現場で見受けられます。
藤本様はいくつもの天井耐震診断を行っておりますが、
現場で見る天井裏はどのような実態なのでしょうか?

最近は音楽ホールの調査を行うことが多いのですが、天井裏で毎回と言っていいほどよく見かけるのは「溶接箇所の不具合」です。
溶接は職人の技量によって違いがあり精度(強度)は一定ではありません。さらに、軽天屋で施す溶接技術は正直なところ仮止め程度のようなものであり、溶接と言えるのかも定かではありません。溶け込みの量を調整できず構造躯体やチャンネル(野縁受け)等に穴が空いてしまっていることが多く、天井を構成する部材を損傷している場合も少なくありません。
そのほかは、壁際や段差など地震時に大きな力のかかりやすいところはクリップが斜めに取り付けられていることが多くクリップの緩み・外れを多く見かけます。
いずれにせよ、何も損傷が無いということはまずありませんね。

現場の天井裏の様子現場の天井裏の様子

壁際や段差以外にも注意すべき場所はありますか?

イレギュラーな納まりの箇所ですね。
基本的な吊り天井は公共建築工事標準仕様書にて施工のルールが示されていますが、イレギュラーな箇所は特に施工のルールはなく、設計者(監理者)からこういう風に組んでという指示もありません。おおよそのディテールがあって、部屋側からみたカタチが設計図書に書かれているだけで詳細な納まり図の提供や指示はありません。現場での施工は職人に任されており、職人の知恵と経験・判断で納めているのです。設計者(監理者)の方にはイレギュラーな納まりまで指示していただくようにお願いしたいですね。
また、施工の品質にはバラつきがあります。特に音楽ホールなど大きな天井裏をみると、施工は数社の職人がはいっていてそれぞれの癖が見えるくらい品質もバラバラです。

今までの調査のなかで、特に劣化・損傷が深刻な状況になっていると思われた天井はありますか?

プールの天井は錆による腐食がかなりひどいですね。
高耐食鋼板やステンレスの下地材を使っていても殆どの現場で錆びています。
どこか一部で鉄を使っていると、「もらい錆び」で腐食が拡がっているのだと思います。
あとは、施工側だけでは対処しきれず、空調設備や換気装置で対応して頂かないと錆による腐食は妨げないと思います。温泉施設やホテルの大浴場などもリスクは同じで、錆止めを意識しているところは少ないのではないでしょうか。

これまで多くの天井や壁を施工されてこられましたが、
天井耐震診断を通じて、施工では気がつかなかった新たな発見などはありましたか?

施工の際は吊りボルトの太さがまちまちなことには気が付かなったので、調査をしていて驚きました。
施工しているときは正直全部直径が9㎜だと思っていました。コンマ何ミリ単位でボルトの直径が違うんだと。直径が8.9㎜や8.6㎜とかあるんですよね。9㎜未満はJIS材ではないのでしっかり判別したいのですが、アナログでは微妙な測定ができないため正確に数字で確認できるデジタル式のノギスに変え調査・計測をおこなっています。

定期調査報告とJACCA天井耐震診断

JACCAの天井耐震診断報告書は12条定期報告制度の補助資料としても活用することが可能です。定期的に天井の状態を確認することが、いのちを守る空間づくりと施設の機能維持につながります。
天井裏の調査につきましてはJACCAにご相談ください。

JACCAは安全・安心な空間を提供するため、天井の耐震化に関する情報発信を継続していきます。